
税理士法人オンリー・ワンは、東京都八王子市に事務所を構える税理士法人です。「私たちの仕事は税理士業ではなく、サービス業である」という理念のもと、独立開業や相続・事業承継、確定申告、公益法人・NPO法人の税務などを幅広く手がけ、八王子はもとより周辺地域の企業や個人を支えています。2026年2月に故人がご逝去。ご遺族の意向により葬儀は家族葬で執り行われたものの、東京税理士会八王子支部の第9代支部長を務め、地域に深く根ざして活動してきた故人を、事務所としてもきちんと見送りたいという思いから、ご逝去から3カ月あまりが経った同年6月、京王プラザホテル八王子にて「お別れの会」を開催しました。
本記事では、開催に至った経緯や準備の舞台裏、当日の工夫、そして今後受け継いでいきたい故人のDNAについて、現所長の水島栄司様に伺いました。
──税理士法人オンリー・ワンの事業内容と、日々どのような価値をお客様に届けているのかを教えてください。
水島様:私たちの仕事はサービス業だと思っています。士業というと敷居が高く感じられることがありますが、なるべくそれをなくして、誰からも気軽に相談してもらえる事務所でありたいと考えています。業務の基礎になるのは法人企業の毎月の巡回監査と決算で、そこに年末調整や確定申告、相続税のご相談などが加わります。個人のお客様も、不動産業や不動産賃貸業を中心に、税務相談を中心に関わらせていただいています。八王子を中心に、周辺地域まで幅広く対応しています。
──改めて、故人はどのような存在でいらっしゃいましたか。大切にされていた価値観についても教えてください。
水島様:故人とは中学生の頃からの付き合いとなります。私の父が詩吟を教えていて、故人がそこへ習いに来ていたのがきっかけです。当時、私は中学3年生でしたから、もう50年近くになります。故人は誠実な人でしたね。それから、仕事も遊びも一生懸命取り組む人でした。嘘をつかない、そういうところもありました。故人とは親子ほど歳が離れていましたが、ある意味では親も同然の存在でした。故人と出会っていなければ、税理士という仕事を選んでいなかったという点では、いわば恩師のような存在でもありました。
──故人は、地元・八王子との関わりも大切にされていたと伺いました。
水島様:東京税理士会八王子支部長や、ロータリークラブの会長なども務め、地域社会への貢献に力を注いだ人でした。お別れの会でも「そんなことまでやっていたのか」と周囲から驚かれるほど、いろいろな活動に関わっていましたね。趣味は詩吟と茶道、それからゴルフと多彩で、仕事以外の場でも、一生懸命取り組む人でした。
──日々の仕事の中で、故人のDNAを感じる場面はありますか。
水島様:細かいことは気にしない、という大らかな点でしょうか。もちろん損益に影響するミスは別ですが、影響のない範囲であれば大らかに構える。そういう姿勢のおかげで、正直、私自身は仕事がやりやすかったですし、故人から叱られた記憶もほとんどありません。私が故人の事務所に入り、税理士資格を得た後、慣例に従って一度事務所を離れて14年間独立していたとき、「戻ってこないか」と声をかけてくれたのも故人でした。当時は、他人同士で税理士法人を作るのは珍しく、八王子では私たちが初めてだったと聞いています。仕事だけでなく、お客様や事務所への向き合い方そのものを引き継いでいかなければならないと感じています。
──ご逝去から、法人として「お別れの会」を開催しようと思われた経緯を教えてください。
水島様:故人は2026年2月28日に亡くなりました。ご遺族の意向で家族葬として執り行われました。当事務所から税理士会などには、訃報とともに、家族葬で終えたことや、お香典を辞退させていただく旨をご案内いたしました。
それでも、案内後には多くの問い合わせをいただきました。そんな折、後に公益社様をご紹介くださることになる立川の会計事務所様が、同じように先代所長を亡くされて「お別れの会」を開かれると聞き、ご招待いただく機会を得ました。
──お別れの会に参加されて、どのように感じましたか。
水島様:実際に参列してみて、「いい会だな」と思うとともに、このまま何もせずに終えるわけにはいかないな、と感じました。生前、故人と交流があった方やお世話になった方の中には、故人に手を合わせたいという気持ちを持つ方が少なからずいらっしゃいます。正直、このまま2、3年何もせずに過ごしてしまえば、時の経過とともに誰も何も言わなくなるのかもしれない。ただ、それでいいのかという葛藤が自分の中にずっとありました。そこで、事務所としてきちんとけじめをつける場として、お別れの会を開催しようと決めました。
──準備期間の中で、一番悩まれた点はどんなことでしたか。
水島様:ご案内する方のリストづくりと招待状ですね。税理士会や関与先については私自身ある程度把握していましたが、故人が長く関わっていたロータリークラブ関係については、正直よくわからない部分がありました。それと、後になって気づいたのですが、お別れの会には、基本的に招待状をお送りした方しかいらっしゃいません。しかし、こちらで把握していない中にも、故人にお別れしたいという方がいらっしゃったかもしれません。そこで、招待状に「お知り合いにもお声がけください」という一文を添えれば、もっと多くの方に来ていただけたかもしれないと、今となっては思います。
また、当日の出欠を確認できる「オンラインの参会者管理システム」も利用させていただきました。ご年配の方からは電話でのお問い合わせも多くいただきましたが、公益社様にまめに相談しながら進めることができたので、心強かったです。供花のお申し込みもオンラインで行うことができ、想像した以上に多くいただきました。
──当日の運営で、工夫された点やこだわった点を教えてください。
水島様:会場は京王プラザホテル八王子にしました。駅から近く、参列してくださる方の多くがこの地域の方だったので、アクセスの良さを重視しました。式は、実際に参列させていただいた立川の会計事務所様の会の形式を参考にしました。それまで私がイメージしていたお別れの会は、皆で手を合わせ、その後立食でお食事をするような形で進む会でした。一方、参列した会では、式典と会食が二部制に分かれていました。そこで、自分たちの会でも11時半から式典を開始し、私からの挨拶、故人ゆかりのスライド上映、献花を経て、そのまま懇親の場に移っていただく流れにしました。
スライドでは故人の歩みを振り返る映像を流し、会場には茶道や詩吟にゆかりのある品を展示しました。お通夜やお葬式では、流れに沿って焼香をして終わってしまうことも多いのですが、お別れの会では、スライドや展示等を通じて、故人がどんな人生を歩んできたのか、参列した皆様に偲んでいただけたのではないかと思います。当日は事務所の職員にも受付や会場案内、懇親会場でのお話し相手を担ってもらいました。
──お別れの会を終えてみて、「開催してよかった」と感じたのはどんな瞬間でしたか。
水島様:手前味噌かもしれませんが、まずは「開催できたこと」自体が一番の収穫だったと思っています。それから、参列してくださった皆様にもきちんとお別れをしていただけたということです。式のあと、故人のお墓へお参りに行ったのですが、故人は樹木葬で、いわゆる墓石がありません。一同にとっても樹木葬のお参りは初めての経験でしたが、そこで初めて、それぞれの中で区切りがついたような雰囲気を感じました。
──社員の方や参列された方など、印象に残っている反応やお言葉はありますか。
水島様:関与先の皆様から「よかったよ」「お別れができてよかった」「すごいことをやったね」といった言葉をたくさんいただきました。実はご遺族からは、故人は晩年、家族葬を望んでいたと聞いていました。ただ、それはきっと、周りに迷惑をかけたくない、派手にしたくないという気持ちからくるものだったはずです。故人はもともとこうした賑やかな場が好きな人でした。私は故人のそうした性格も知っていたので、お別れの会を通じて皆様に故人を偲ぶ場を設けることができ、故人の思いに応えることも少しはできたかなと感じています。
──お別れの会を通じて改めて確認された故人のDNAを、今後どのように受け継いでいきたいですか。
水島様:故人が築いてきたものが、すんなり私に引き継がれたわけではありません。私は一度事務所を離れ、14年ほど外で仕事をしていました。それでも声をかけてくれたのは故人です。税理士事務所は、税理士がいなくなるとその日から仕事が続けられなくなってしまいます。しかし、税理士法人であれば、次の税理士が見つかるまで半年間の猶予が生まれます。従業員やお客様を路頭に迷わせないために、法人化という道を選択し、そのパートナーとして私を選んでくれました。
そんな故人の思いを受け継ぎ、日々の業務を誠実に行い、税額を正しく計算するのは当たり前のことですが、それだけでなく、お客様や事務所に寄せられる相談の一つひとつに親身に向き合う。そうした姿勢を、これからもきちんと引き継いでいきたいと思っています。
──最後に、これから「お別れの会」の開催を検討される企業のご担当者へ、メッセージをお願いします。
水島様:もし、やるかやらないかを迷っているなら、やった方がいいと思います。もちろん費用はかかりますし、正直に申し上げると私自身、迷いもありました。ただ、それはいつかどこかで取り返せるものだと私は思っていますし、迷ったままやらずに終えてしまうよりは、開催してよかったと思える方がずっといいはずです。不安に思う点は公益社様のようなプロフェッショナルが支援してくれます。私たちはお別れの会を開催して本当によかったと感じています。